山陽新聞押し紙裁判準備書面(6)
このような押し紙は、新聞販売店に不利益を与えるものとして古くから独占禁止法で禁止され、違法とされていたにもかかわらず、今なお隠然として行われている。
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山陽新聞 押し紙裁判準備書面(6)
平成20(ワ)第943号 損害賠償事件
原 告 原 渕 茂 浩
被 告 株式会社山陽新聞社ほか2名
2009年7月1日
準備書面(6)
岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中
原告訴訟代理人
弁護士 位 田 浩
被告らは、原告の岡輝販売センターにおける注文部数(実売部数+予備紙)を知りながら、これを大幅に超える目標数を設定して原告に「注文」させ、目標数に応じた大量の押し紙を含む新聞を違法に供給し続けた。ところが、被告らは、あたかも原告が折込チラシの減少を怖れたために、目標数や取引部数を減らさなかったかのように主張している。
しかし、原告ら販売センターに支給される折込チラシ料(実際には、新聞の仕入原価から控除されるだけである。甲4の「控除明細」欄の「折込料」参照)は、押し紙による水増し分があったとしても押し紙の仕入原価にまったく足らず、実際には、押し紙の仕入原価の一部として被告らに回収されているにすぎない。原告の準備書面(5)第9項でも述べたとおりである。したがって、原告が被告らに対して押し紙を減らすよう求めたことはきわめて自然かつ合理的なのである。
かえって、被告らは、実売部数をはるかに超える部数を「折込定数」として設定し、広告主から、実際に配達される折込チラシ枚数に見合うものより多額の広告料金を収受している。そのような不法な「折込定数」を設定・維持するために、被告らにとって、実売部数を大幅に超える押し紙が必要であったということができる。
以下、詳細する。
1 折込チラシ枚数について
(1)山陽新聞の折込チラシは、毎日、配達指定日の前日に株式会社山陽折込広告センター(以下「山陽折込広告センター」という)から送られてくる。
原告ら販売センターは、山陽折込広告センターから送られてきた折込チラシを折込機を使って一まとめにし、翌日の朝刊に手作業で折り込み、配達するのである。
(2)山陽折込広告センターは、新聞折込チラシの代理店等をしている会社であり、被告山陽新聞社の子会社又は関連会社である。
山陽折込広告センターの取締会長は、被告山陽新聞社の代表取締役である佐々木勝美であり(なお、佐々木勝美は被告岡山東販売の取締役と被告岡山西販売の取締役を兼任している)、代表取締役は社長は、被告山陽新聞社の取締役専務(販売担当)である藤田学である(甲64)
したがって、山陽折込広告センターは、被告山陽新聞社の完全な支配下にあるといえる。
(3)折込チラシの枚数は、被告山陽新聞社及び山陽折込広告センターが定めた「折り込み定数」をもとにされている。
しかし、被告山陽新聞社らが設定する「折込定数」は、実際の実売部数はおろか、押し紙を含む新聞の送り部数をもはるかに超える部数が設定されている。そうして、被告らは、広告主をして折込定数が実際に配達される部数であると誤診させて、実際には配達されない不必要な折込チラシ枚数を注文させ、広告主から過大な広告料金を収受しているのである。「折込詐欺」と呼ばれる手法である。
(4)原告の岡輝販売センターにおいても、被告らによって同様の行為が行われていた。
例えば、2006年6月1日に発送された山陽折込広告センターからの折込広告納品書/予定表(甲65)をみてみよう。
「広告主」欄の隣に「送付部数」欄がある。これが原告の岡輝センターに送られる折込チラシの枚数である。最大で2400枚となっているが、これが当時の「折込定数」である。ほとんどの広告主の送付部数が2000枚を超えている。
ところが、この時期の岡輝販売センターにおける実際の配達部数は1546部にすぎない(甲52)。被告販売会社から送られてくる送り部数でも1871部である(乙21)。送り部数よりも529部も多い「折込定数」が決められているのである。
岡輝販売センターでは、2400部の広告のうち、実に854部(約35%)が押し紙と同じように余ってしまう。その結果、販売センターの店舗には大量の配達されない折込チラシがたまっていく。被告販売会社は、そうした折込チラシを廃棄するための段ボール箱まで用意して、販売センターに支給している。被告らは組織的な不法行為を行っているのである。
2 原告が違法な押し紙を引き受ける経済的メリットがないこと
(1)折込チラシ料の配分システムについて
広告主から支払われる折込チラシ料は、おおむね次のとおり配分されている。まず、山陽折込広告センターと被告販売会社がそれぞれ25%ずつ(合計50%)を受け取る。
次に、残り50%のうち、新聞の送り部数に見合う部数に応じた分が販売センターに配分され、その余りを被告販売会社が受け取る。
(2)被告らとすれば、「折込定数」を維持することで、多額の折込チラシ料を受け取ることができるシステムになっている。したがって、折込定数を維持しなければならないが、それがあまりに販売センターへの送り部数と乖離することは避けなければならない。そのために、被告らにとって、違法な押し紙を含む送り部数を維持していくことが必要になるのである。
(3)他方、原告ら販売センターにとっても、たしかに送り部数が増えることで、販売センターに配分される金額が増えることにはなる。
しかし、実際には、1部当たりにすると、折込チラシ料よりも押し紙の支払原価の方が圧倒的に高い。原告の準備書面(5)第9項で述べたとおりである。そのため、販売センターにとっては、押し紙が増えることによる折込チラシ料金の水増し金額(収入)よりも、押し紙が増えることによる新聞原価の支払金額(支出)が大きく、押し紙を引き受けるメリットはまったくない。
(4)以上のとおり、実売部数が減っているのに、送り部数を維持すること、すなわち押し紙を増やすことは、多額の折込チラシ料と新聞原価を受領する被告らにとってこそ経済的なメリットがあるが、原告ら販売センターにはデメリットしかない。
したがって、原告が折込チラシ料の減少を怖れて目標数や取引部数を減らさなかったかのようにいう被告らの主張は失当というほかない。
以上
平成20年(ワ)第943号 損害賠償請求事件
原 告 原 渕 茂 浩
被 告 株式会社山陽新聞社ほか2名
平成21年8月20日
岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中
被告ら3名訴訟代理人弁護士 香 山 忠 志
準備書面(6)
原告の準備書面(6)、準備書面(7)については全面的に否認ないし争う。
1 原告の準備書面(6)について
(1) 原告は「折込詐欺」などと主張しているが、、折込チラシのスポンサーから「折込詐欺」など言われたことは
一度もなく、これに加えて原告が廃棄した平成19年3月までの時点で、折込チラシの部数の多寡、折込チラシの広告料収入の多寡について、原告から一度も不平不満を聞いたことがない。被告らを「折込詐欺」などと誹謗することは見当違いも甚だしい。
(2) 本件は、原告の言葉を借りれば「押し紙裁判」であり、被告らに原告の自由意志を抑圧して新聞の注文部数をはるかに超える送り部数を送るという不法行為があったか否かが争点であり、折込詐欺の有無が争点ではない。
2 原告の準備書面(7)について
これは甲63に基づく一般的抽象的な主張であり、この甲63の記事内容について真実ではないとして、朝日新聞と読売新聞、毎日新聞の三社は謝罪と訂正を求めて新潮社に対して抗議ないし抗議文を送り(乙37の1、2)、そのうち読売新聞社は信用毀損により5000万円の損害賠償と謝罪広告を求め、新潮社と黒藪氏を相手として東京地裁に提訴している(乙37の3)。今般の原告の主張は、事実無根の記事をもとにした架空の主張である。本件の事案に即した具体的な主張をされるべきである。
3(1) 被告らの準備書面(5)の5頁で述べたが、平成16年5月から10月までの6ヶ月間(更には、18年1月についても)は、原告と販売会社との間で何らかの話し合いがなされ、部数調整をして前年同月よりも減紙した時期があったようであるが、それ以外は前年同月よりも目標数が同じか増加している。しかし、目標数の設定について原告も特段の異論はなかった。答弁書6頁でも述べたが、原告が岡輝販売センターを始める前、岡山日日新聞社販売局に勤務しており、部署の性質上、独禁法を注視すべき部署であり、独禁法の特殊指定(押し紙)を知らないはずはない。その後、原告は同社を退職してからは、今度は販売店側にまわり、毎日新聞藤原販売所で新聞販売を行っている。このように原告は、岡輝販売センターを始める前、12年間にわたって、会社側(販売局)と販売店側を経験していたのである。そうした人物であるが故に、販売会社との取引で、独禁法上の問題があれば、被告らへ直接又は公正取引委員会へ、異議を申し立てていたはずである。
(2) そして、被告ら準備書面(2)の0頁で述べたように、折込チラシの広告料収入は5日定数と連動しており、原告の場合、年間2000万円を超えており(被告らの準備書面(3)の6頁、乙21、乙38参照)、原告にとってみれば少なからざる収入である。原告が目標数の設定に異議を言わず、朝刊の注文部数も目標数と同数かプラス1部で注文していたのも、折込チラシの広告料収入を当てにしていた面があったことは否定しようがない事実である。だからこそ折込チラシの広告料収入のない夕刊については5日定数の注文も平気でマイナス部数で注文をしてきているのである(被告ら準備書面(5)8頁参照)。また被告ら準備書面(5)の7、8頁でも述べたが、原告が読者管理、顧客管理が十分にできていなかったため、原告に実売部数の把握ができていなかったという面もあり、そうであるが故に原告が目標数の設定に異議をいわず、漫然と目標数と同数かプラス1部で注文を出していたのである。
(3) 原告は準備書面(6)の4頁で「販売センターにとっては、押し紙が増えることによる折込チラシ料金の水増し金額(収入)よりも、押し紙が増えることによる新聞原価の支払金額(支出)が大きく、押し紙を引き受けるメリットは全くない」と述べているが、そもそも原告は当時、漫然とまたは利害損得を考慮のうえ、目標数を決め、あるいはそれに従った注文を出し、収入分と支出分とを相殺処理をし、その上で払うべきものは払い、受け取るべきものは受け取り、廃業時点まで異議なく処理されてきたものであり、岡輝販売センター経営時点では原告に「押し紙」という認識はなかったのである。今になって「押し紙」だと非難される理由はどこにもない。
4 原告の準備書面(6)の3頁の上から7行目に「甲52から実際の配達部数(実売部数のことであろう)は1546部」と主張しているが(原告の準備書面(1)の一覧表(4)の18年6月の数字と同じ)、その数字は架空の数値であり、証拠による裏付けのあるものではない(被告らの準備書面(5)7頁の「2 実売部数について」と被告らの準備書面(3)を参照)。同様、原告の準備書面(1)の一覧表(1)~(5)の購買部数(すなわち、実売部数)の数字にも、何の根拠もない。
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